ACS メールマガジン

 
動物循環器病学会

動物循環器病学会メールマガジンNo.1(2017.8.16 発行)

 
動物循環器病学会 会員のみなさま
 
平素より格別なご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 
この度、動物循環器病学会よりメールマガジンを発行する運びとなりました。
 
このメールマガジンでは、心臓病・腎臓病・呼吸器病に関するジャーナルから、選りすぐりの論文のアブストラクトを日本語にしてお届けします。
 
どうぞよろしくお願いいたします。
 
早速ですが、記念すべき第一回は、2017年6月に発行された『Journal of Veterinary Cardiology Volume 19, Issue 3』からとなります。
 
  今回はこの5報をご紹介いたします。
 (アブストラクト訳の全文は以下のURLにて日本語タイトルをクリックしてください。原文のタイトルをクリックすると英文アブストラクトがお読みいただけます。)
 
http://www.jvcvm.org/mailmaga/170816.html
 
(1)ペースメーカー植込みを行なった持続性心房静止の犬の生存期間
 持続性心房静止の犬において、ペースメーカーがあっても亡くなる理由が心臓疾患に直結する訳では無いようです。 
 
(2)リアルタイム3D経食道心エコーガイド下で閉鎖を行なった複雑な動脈管開存症の犬の一例
画像技術もどんどん進化しています。PDA閉鎖術において、その進化した技術が力となり発揮された症例報告。
 
(3)自然発生した粘液腫様僧帽弁疾患の犬におけるアルドステロンブレイクスルー
ACEI投与中の粘液腫様僧帽弁疾患の犬にはアルドステロンブレイクスルーが高率で起こっているようです。そこで、改めて鉱質コルチコイド受容体ブロッカーに注目です。
 
(4)ePTFE腱索移植装置を用いた犬の僧帽弁修復術:パイロット研究
腱索を移植する機械であるHarpoon TSD-5をご存知ですか?アニメーション動画(人)はこちらになります。https://www.youtube.com/watch?v=tfJyvAWScbQ
 
(5)肺高血圧症を併発した/していない粘液腫様僧帽弁疾患の犬における三尖弁輪収縮期移動距離
組織ドプラにて三尖弁輪部の長軸方向の運動を測定するTAPSEという検査項目についての記述です。
 
★投稿原稿の募集!
 
動物循環器病学会では、12月に学会誌『Journal of Veterinary Cardiovascular Medicine』の発行を予定しており、現在投稿原稿を募集しています。
 
日々の診療の中で集まる貴重な情報を、みなさまでシェアさせていただけたら大変嬉しく思います。我こそは、と思われる先生、ぜひ事務局までご連絡ください。お待ちしております!
 
投稿規定については以下をご参照下さい。
 
http://www.jvcvm.org/JVCVM/Instruction_for_Author_Japanese.html
 
★学術集会ハンドアウトをWEBで公開予定!
 
9月30日に開催される第2回動物循環器病学会学術集会のハンドアウトを、9月22日にWEBで公開する予定にしております。詳細につきましてはまたメールでご案内いたします。
 
動物循環器病学会は、動物の命を救おうと懸命にチャレンジする先生方のお力に少しでもなれるよう、これからも情報を発信していきたいと思っております。
 
雨が続く安定しない天候が続いております。夏の疲れが出ませんように、どうぞご自愛くださいませ。
 
一般社団法人動物循環器病学会事務局
 
http://www.jvcvm.org/index.html
 
住 所:〒224-0001 横浜市都筑区中川2-7-3
メール:acs@jasmine-vet.co.jp

電 話:045-532-8451

 Survival time with pacemaker implantation for dogs diagnosed with persistent atrial standstill

ペースメーカー植込みを行なった持続性心房静止の犬の生存期間
 
R.M.Cervenec DVM, MSa. C.D.Stauthammer DVMa. D.M.Fine DVM, MSb. H.B.Kellihan DVMc. B.A.Scansen DVM, MSd aDepartment of Veterinary Clinical Sciences, College of Veterinary Medicine, University of Minnesota, 1365 Gortner Ave., St. Paul, MN 55108, USA bDepartment of Veterinary Medicine and Surgery, College of Veterinary Medicine, University of Missouri, 900 East Campus Drive, Clydesdale Hall, Columbia, MO 65211, USA cDepartment of Medical Sciences, University of Wisconsin, 2015 Linden Dr, Madison, WI 53706, USA dDepartment of Veterinary Clinical Sciences, College of Veterinary Medicine, The Ohio State University, 601 Vernon L. Tharp Street, Columbus, OH 43210, USA
 
概要
目的
本研究の主な目的は、ペースメーカー植込みを行なった持続性心房静止の犬の生存期間を評価し、心臓関連死あるいは非心臓関連死での死亡例の生存期間を比較することである。第二の目的は、犬種および診断時点でのうっ血性心不全(CHF)の存在が、生存期間に影響したかを評価することである。
 
動物
持続性心房静止がありペースメーカーを植込んだ犬20頭。
 
方法
カルテを検索し、心電図を基に持続性心房静止と診断されペースメーカー植込みを行なった犬を鑑定した。ペースメーカー植込み後の生存期間はカプラン・マイヤー法により解析した。
 
結果
全ての死亡例においてペースメーカー植込み後の生存期間中央値は866日であった。心臓関連死(506日)と非心臓関連死(400日)の生存期間中央値に有意差はなかった(P=0.573)。診断時のCHFの存在は生存期間に影響を及ぼさなかった(P=0.854)。犬種による生存期間中央値にも有意差は見られなかった(P=0.126)。
 
結論
持続性心房静止の犬に対しペースメーカー植込みを実施した場合の生存期間中央値は866日であったが、生存期間は幅広く観察された。心臓関連死と非心臓関連死の犬の生存期間中央値には違いは見られなかった。犬種や、ペースメーカー植込み前のCHFの存在は生存期間中央値に影響を及ぼさなかった。
 
キーワード
犬、徐脈性不整脈、うっ血性心不全、心房筋障害

⑵ Real-time 3D transesophageal echocardiography-guided closure of a complicated patent ductus arteriosus in a dog

リアルタイム3D経食道心エコーガイド下で閉鎖を行なった複雑な動脈管開存症の犬の一例
 
K.R.Doocy DVM.  D.A.Nelson DVM. A.B.Saunders DVM
Department of Small Animal Clinical Sciences, College of Veterinary Medicine and Biomedical Sciences, Texas A&M University, College Station, TX, USA
 
概要
犬の動脈管開存症(PDA)の閉鎖術において経食道心エコー法(TEE)が使用されるなど、獣医循環器学領域において高度な撮影法がより広く使われるようになってきている。今回報告する症例には複雑なヒストリーがあった。最初の閉鎖術は未完に終わり、またPDAが大きかったため当初はカテーテル治療による器具の設置は不可能であり、PDA閉鎖術の選択肢は限られていた。2度の開胸術を行い部分的に結紮することにより、PDAの形態が変化し、塞栓器具による閉鎖が選択肢となった。ヘモクリップがあること、また、結紮による形態的変化が動脈管の血流方向を変化させたことから、血管造影によりPDAの評価をすることには限界があった。そこで、PDA形態の評価、操作中のモニタリング、器具のサイズの選択、器具の位置を確認するにあたって、術中のTEE、特にリアルタイム3D画像が非常に有効であった。異常な位置関係にも関わらず、TEE画像によって術者は閉鎖栓離脱前に器具のサイズと位置が適切である確信を持つことができた。この報告では、複雑な症例においてもPDA閉鎖術を成功させるために、術中のTEE、特にリアルタイム3D画像の利点に焦点を当てていく。
 
キーワード
犬、うっ血性心疾患、画像誘導、インターベンション

⑶ Aldosterone breakthrough in dogs with naturally occurring myxomatous mitral valve disease

自然発生した粘液腫様僧帽弁疾患の犬におけるアルドステロンブレイクスルー
 
M.K.Ames DVMa. C.E.Atkins DVMa. A.Eriksson DVMa. A.M.Hess MS, PhDb
aDepartment of Clinical Sciences, College of Veterinary Medicine, North Carolina State University, 1060 William Moore Dr. Raleigh, NC, 27607, USA
bDepartment of Statistics, Colorado State University, Ft. Collins, CO, USA
 
概要
序文
アルドステロンブレイクスルー(ABT)とは、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)あるいはアンギオテンシン受容体ブロッカーまたはその両方が、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系の活性を効果的に抑制できない状態のことをいう。本研究では、ACEI投与中の自然発生した粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)の犬においてABTが生じるかどうかを判断することを目的とした。尿中のアルドステロン・クレアチニン比(UAldo:C)をレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系の活性の指標とした。
 
動物、材料および方法
本研究では粘液腫様僧帽弁疾患の犬39頭を用いた。今回の母集団におけるABTの罹患率を決定するために、飼い主のいる健康な成犬の正規母集団から設定したUAldo:C のカットオフ値を用いた。スピアマン分析と単変量のロジスティック回帰分析を用いて、UAldo:C とABT(あり/なし)、8つの変数(年齢、血清K+濃度、血清クレアチニン濃度、ACEI治療期間とACEI投与量、フロセミド治療期間とフロセミド投与量、尿サンプルの保存時間)との関連性を評価した。さらに、うっ血性心不全(CHF)の治療のためにスピロノラクトンを投与している犬と投与していない犬のUAldo:Cを比較した。
 
結果
ABTの罹患率は、CHFの犬において32%、CHFではない犬において30%であった。UAldo:CとABTの尤度、8つの変数の間に関連性はなかった。スピロノラクトンの治療により、UAldo:Cは有意に増加した。
 
考察
UAldo:C 、そして厳密な条件で定義したABTの結果から、ACEIを投与されているMMVDの犬においてレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系の遮断が不十分になることは一般的であると分かった。今回の犬の母集団におけるABT罹患率は人での報告とよく似ている。ABTのメカニズムはおそらく複合的でありまだ完全に分かってはいないが、犬のABTの存在を示すことで、鉱質コルチコイド受容体ブロッカーを現在の治療計画に追加し、MMVDの予後を改善させる可能性があるだろう。
 
結論
心疾患やCHFの治療中の犬のおおよそ30%がABTの定義を満たしていた。ABTを生じている症例の亜集団を同定することで、今後の研究デザインや臨床判断を導く手助けとなるだろう。
 
キーワード
アンギオテンシン変換酵素阻害薬、鉱質コルチコイド受容体ブロッカー、心不全、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系

(4) Mitral valve repair in dogs using an ePTFE chordal implantation device: a pilot study

ePTFE腱索移植装置を用いた犬の僧帽弁修復術:パイロット研究
 
M. Borgarelli, DVM, PhD a,*, O. Lanz, DVM a, N. Pavlisko, DVM, MS a, J.A. Abbott, DVM a, G. Menciotti, DVM a,
M. Aherne, MVB a, S.M. Lahmers, DVM, PhD a, K.K. Lahmers, DVM, PhD b, J.S. Gammie, MD c
a Department of Small Animal Clinical Sciences, Virginia-Maryland College of Veterinary Medicine, Blacksburg, Phase II, Duck Pond Dr., VA 24061, USA

b Department of Biomedical Sciences & Pathobiology, Virginia-Maryland College of Veterinary Medicine, Blacksburg, 205 Duck Pond Dr., VA 24061, USA
c Division of Cardiac Surgery, University of Maryland School of Medicine, 110 S. Paca St., MD 21201, USA
 
概要
目的
変性した僧帽弁(MV)疾患に起因する僧帽弁逆流症は、犬の心臓死の主因である。我々は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)腱索移植装置(Harpoon TSD-5)を犬に用いて、心拍動下での僧帽弁修復術の可能性と短期的な影響を決定する予備実験を行なった。
 
動物
本研究では健康な実験用のビーグル(体重8.9-11.4kg)6頭を用いた。
 
材料と方法
全身麻酔下で小さく開胸し、左心室経心尖アプローチにより、TSD-5を用いて1本または2本のePTFE人工腱索をMV前尖あるいはMV後尖に移植した。手術は経食道心エコーによって誘導・モニタリングされた。術後の抗血栓療法として、クロピドグレル単独かクロピドグレルとアピキサバンのコンビネーションを用いた。経胸壁心エコー検査により、犬を1、7、14、21、30日目に評価した。その後心臓を検査し、組織反応の評価と内皮化の徴候を検出した。
 
結果
5頭において1本または2本の腱索の移植に成功した。4頭は30日後の経過観察時でも腱索は維持されていた。1頭は大動脈穿孔により術中に死亡した。1頭は抗血栓療法が過度に強力であったため、出血性胸水を生じ術後早い段階で死亡した。1頭はePTFEの結紮部分と人工腱索の両方の周囲に血栓を形成した。剖検の結果、全ての犬において僧帽弁尖に強固なePTFEの結紮を設置することができ、結紮と腱索の内皮化が確認された。
 
結論
この予備実験結果から、ePTFE腱索移植装置を用いた犬の人工腱索移植の可能性を示すことができた。
 
キーワード
犬、心臓弁、弁手術、経心尖、心拍動

(5) Tricuspid annular plane systolic excursion in dogs with myxomatous mitral valve disease with and without pulmonary hypertension

肺高血圧症を併発した/していない粘液腫様僧帽弁疾患の犬における三尖弁輪収縮期移動距離
 
H. Poser, DVM, M. Berlanda, PhD , M. Monacolli, DVM , B. Contiero, MSc.S , A. Coltro, DVM , C. Guglielmini, PhD
University of Padua, Department of Animal Medicine, Production and Health, Viale dell’Universita`, 16, 35020, Legnaro PD, Italy
 
概要
目的
本研究の目的は、肺高血圧症(PH)を併発した/していない粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)の犬における三尖弁輪収縮期移動距離(TAPSE)を評価すること、さらに臨床的あるいは心エコー検査でのパラメーターを調査することである。
 
動物
本研究の母集団はMMVDと三尖弁逆流を呈した犬99頭である。
 
方法
これは前向きの臨床研究である。全ての犬に対し経胸壁心エコー検査による評価を実施し、2D、Mモード、エコードプラ、組織ドプラ計測を行った。TAPSEは左心尖部四腔断面像から計測し、体重の影響を考慮し標準化した(nTAPSE)。犬はMMVDの重症度(米国獣医内科学会ガイドライン)およびPHの有無と重症度に応じてグループ分けをした。MMVDとPHの重症度のグループにより、TAPSEあるいはnTAPSEと心エコー検査パラメーターの間に有意な差が生じたかを分析した。TAPSEもしくはnTAPSEと心エコー検査パラメーターの相関関係を算出した。
 
結果
三尖弁輪収縮期移動距離あるいはnTAPSEは、MMVDとPH重症度のグループ間で有意差は見られなかった。TAPSEと体重、左室径、左房径、拡張早期中隔、拡張および収縮早期三尖弁輪速度の間には有意な相互関係がみられた(P < 0.001)。nTAPSEと標準化した左室拡張末期径および短縮率(FS)との間には有意な関連があった(P < 0.001) 。
 
結論
本結果から、PHを併発した/していないMMVDの犬において、TAPSEとnTAPSEはどちらとも減少しないことが分かった。これは、実際に右心室機能が減少しなかったのか、心室の相互依存から、左心室の収縮が右心室機能の減少を隠したのかは不明のままである。
 
キーワード
犬、心疾患、心エコー検査、右心室、三尖弁輪

 
 

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